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ネタバレ*捏造設定*擬人*BL表現*同人表現注意 /熱しやすく冷めやすい移り気絵置き場倉庫
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百年哀歌




妄想暴走ウシアマ過去捏造雑文注意

たとえば君は
草のなる音だったり
木漏れ日だったり
水のせせらぎだったり
炎の暖かさだったり
土のやわらかさだったり
花の馨しさだったり

あらゆるものが君に繋がっていくのに
あらゆるものが君そのものではない

**百年哀歌**

この百年
幾度も忘れたいと繰り返し思っては
傷を抉ってその願いこそを忘れてきた

(いっそ楽になれたら)
そう願わないでいられるほど、強くもなく、また誠実でもなかった。
元々自分はそういう性格をしていないのだ。
人をからかう事を面白がる程度には、いい性格をしていた。
取り立てて悪人でもなく、決して善人でもない。
元々は、そういう平々凡々な種類のモノなのだ。自分は。


天神族というのは、まさに文字通り天使のような種族だった。
疑いもせず、蔑みもせず、恨みもしない。
鈴の音のように笑い、花のように微笑む。
もしかすると、全ての「悪感情」というものを持ち合わせていなかったのかもしれない。
あまりにも純粋だからこそ、こんな中空に隔離されたのではないかと
一時期真剣に考えたものだった。

唯一の例外があるとすれば、彼らの長たるシラヌイ。
あれだけは、神々しい人々らの中で酷く俗っぽかった。
食い物に執着するわ、行儀は悪いわ。案外好戦的な部分もあって、よく物を壊した。
自分の目には、シラヌイはまるで子供のようにも見えた。

たとえば、シラヌイが野を走れば、供もあわせて野を走る。
だが、あの神速についていけるはずも無く、すぐに皆へたばってしまう。
それを奴は気遣いもせず、からかうように一声鳴いて、ぐるぐると供の周りを駆け回るのだ。
たとえば、シラヌイは自分が眠くなればその場で丸まってしまう。
慌てる供が起こそうと横に座れば、その膝に頭を乗せてしまい
結果供もそこで昼寝を強要されてしまう。

そんな傍若無人ともいえるシラヌイを、それでも天神族は慕い、付き従うのだ。

奴が長たる理由はその神格の高さ故なのだろうと思っていた。
他に理由が見当たらないのだ。
天は二物を与えず、とはいうが、何の事はない。
天たるシラヌイこそ二物を持っていないのだから、過剰に期待する方が間違っている。
その高い神格に見合うだけの気高い性格やらなんやらを、天神族に分配して使い切ってしまったのだろう。
目を見張る神技は、目を覆いたくなるような所業によって相殺される。
呆れる事はあっても、尊敬などできるわけが無かった。

自分が呪われた月の民なのだということも「それがどうした」といわんばかりに
大きく欠伸を一つして、奴は無視した。
受け入れられたというよりも、放置されたという方が近い。
悪感情でもって対処されなかった事は正直有難かったし、感謝もしている。
同情がほしいわけでも、詮索をされたいわけでもなかったが
こうも見事に無視されては、自分でなくてもムッとしただろう。

自然に自分はシラヌイから距離を置いたし、
奴も、自分が必要とされていなければ関わろうとしない。
そんな関係が静かに続いていたのだ。


「ありがとう」
血に染まる白い羽を散らして、唇を歪めながらも、なお天神は微笑んだ。
自分が連れてきた災悪に命を奪われても。

言い訳がしたかった。
自分も知らなかったのだと。
謝りたかった。
全身全霊で。

しかしその「ありがとう」の言葉の前では、
どの言葉も会話として成り立たなかった。
やり場のない言葉は、ただ闇雲に叫びとなって、剣を振るう腕を震わせた。

天神族は、優しい種族だ。
だから、他を攻撃する事にあまりにも不慣れだった。
相手が妖怪でも、血が舞えば顔をしかめ、屈強な戦士でも涙を流す。
涙で曇った瞳で、死闘を戦い抜くことが出来るはずがない。
天神が泣いて哀れんだ、その仲間の肉を目の前で踏み潰し、鈍器を振り上げた妖怪共に
一人、また一人と誰にも哀れまれず、白い羽は散っていった。

何度か、剣にこびりついた血糊と肉のかけらを傍に転がる妖怪の体でふき取った。
血の香りで、既に鼻は麻痺している。
手に持った日本刀の柄は、服を裂いて作った布で巻かれ手と一体化していた。
脂で既に刀としての役目を終えてしまった金属の塊は、刃毀れが酷く
すでに鈍器としての使い方でしか、役に立たなくなっている。
幸い愛刀のピロウトークはそういったものと無縁だから、
幾分赤みを混ぜた碧の光を一閃すると元通りの碧を取り戻す。

すでに動いているのは白い獣一匹と、幾重もの妖怪の壁のみになっていた。
心臓は大分前から正常なリズムを刻んでいない。
呼吸は耳障りな音を立てている。
そういえば、焼けるように熱いのは自分の喉だろうか
目が、痛かった。
瞬きをすることすら、忘れていたのだと
そのときに気が付いた。

二三歩、倒れこむかのように前に進むと、白い獣の背中がまじかに見える。
いつも白い身体には、神を表す文様以外に赤黒い線が何本も走っていた。
神も血は赤黒いのだな、とぼんやり思った。

シラヌイは、自分を責めるだろうか。
それともまた、無いことのように振舞うだろうか。
じっと白い姿を見つめていると、その黒い瞳が振り返った。


一瞬、喉笛を食いちぎられるかと思った。



牙をむいたシラヌイは、その鋭い武器を自分の首にではなく
自分を後方から狙っていた妖怪に突き立てた。
喉笛を食いちぎられた妖怪は、じたばたともがきながらもその身を花に変えて消えた。
呆然と、その動きを目で追う自分に、シラヌイは一度大きく鳴いた。
それは、責める声ではなかった。


ただ、「しっかりしろ」と。
「あきらめるな」と。

生きるために足掻け、とこの背をおしたのだ。


全てを放棄すれば楽になる。
それを決して許さないシラヌイの厳しさ。
全てを許すと自分を甘やかさずに
同じものを背負ってやると、共に歩んでくれた。
優しいだけの存在ならいらない。
過ぎた優しさは時に、麻薬のように人を堕落させる。
許しもしなかったが、見捨てもしなかった。
傍に寄り添い、慰めにもなってくれた。
自分の言葉を聞き、それが真摯な言葉ならどんな内容でも信じてくれた。
気に入らないなら、嫌だといい。間違っていれば、容赦なく噛まれもした。

それがどれだけ自分の救いになったかは、言うまでもないだろう。
シラヌイがその命を落とすまでの間、贖罪の旅の中で
自分はなぜシラヌイが天神族の長たりえたのか、その答えを知った。
力だけではない。
シラヌイのこの有り様こそが、答えだった。



それから自分は、天神族と同様にシラヌイを誰よりも慕い、付き従った。
こんな自分にもわずかばかりに許された、穏やかで優しい時間だった。
今はもう遠い、遠い日。

血の記憶はやたら鮮やかだというのに、優しい記憶ばかりが薄れていく。
あの穏やかな懺悔の旅はすでに過去のもの。
シラヌイの影を、そこここに感じつつも、この手ではもう触る事ができない。
長い時間を一人で過ごすことにも、もう慣れてしまった。
今ではどうしてあそこまで、長い時間他人と過ごしていられたのかわからない。

幼かったのかもしれない。
いや、傷が痛みすぎていたのか。

自分で抉る過去の傷は、消えこそしないが激痛はすでにない。
ただ淡々と自分を蝕むだけだ。
だからこそ、寄りかかれる甘い相手はもう必要ない。
これ以上の優しさは、傷を抉る手を止めるだろうから。

一人、そっと名をよんでみる。
返事はない。
シラヌイのかけらに囲まれて生きているのだ。孤独というには贅沢だろう。
だが、かけらはかけら。時に、余計に寂しい。

「ユーは、寝るのが好きだからなぁ」

その目覚めまであと何年かかるのだろうか。
自分の先見を便利と思った事はなかったが
今回だけは、その力にすがりたいと思った。

再会の約束
めぐり合いの予感

これだけは、     どうか    叶いますように。


2006/06/21
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